そよ風
2018.07.02
「おい!・・・おい!」
テレビを見ながらウトウトして睡魔に抗って
夢と現実の狭間を行き来している一番気持ちのいいとき
嫁さんの声で現実に引き戻される。
「・・・ん?・・・」
なにげに見た嫁さんのあまりに険しい表情に眠気が飛ぶ
「ほら蚊・・・そこそこ!」
血をたら腹吸って体が重くなったのだろう
タタミの上をユラユラと動いている。
このポンコツめ!もっとうまくやれよ!
適当なところで止めればよかったものを欲張るからこのザマだ
オレの小旅行を邪魔しやがって!
そっと近づく・・・逃げる様子はない
「早く!・・・ほら!・・・ほら!」
許せ・・・ボスの命令が出てしまった以上やらなければいけない
手を振りかざし狙いを定める
・・・が・・・黒い物体が何重にも重なって見え
なかなかタイミングを計れない
このところ仕事で使うケイタイがスマートフォンに変わり
小さな画面を凝視することが多くなったせいか
もともと悪い視力が一段と悪化した様だ
本を読むのにはそれほど支障はないが周りがすべてボヤけて見える
片や嫁さんは完全な老眼
老眼鏡なしではファミレスのメニューや財布の小銭も見えない
・・・二人共なかなかのポンコツ・・・
しかしそれはそれでいい
世の中便利になりすぎて知る必要のない事、見る必要のない物までが
まるでシャワーのように日々注がれているこの時代
これくらいのフィルターがあってちょうどいい
「ちょっと逃がさないでよ!」
「分かったから・・・あわてるな」
二人息を殺してゆっくりと近づき・・・動きが止まる
黒い毛玉が扇風機の風に吹かれて転がっているだけ・・・
「なんだ毛玉じゃない!」
「うん・・・毛玉だね」
「あ~やだやだ!」
「まっ・・・お互いポンコツってことだよ」
「まったく・・・お茶でも入れるわ」
「お願いします」
数分間ゆれる毛玉をじっと見つめるポンコツ二人・・・
悲しくもあり・・・微笑ましくもあり・・・
長谷部
テレビを見ながらウトウトして睡魔に抗って
夢と現実の狭間を行き来している一番気持ちのいいとき
嫁さんの声で現実に引き戻される。
「・・・ん?・・・」
なにげに見た嫁さんのあまりに険しい表情に眠気が飛ぶ
「ほら蚊・・・そこそこ!」
血をたら腹吸って体が重くなったのだろう
タタミの上をユラユラと動いている。
このポンコツめ!もっとうまくやれよ!
適当なところで止めればよかったものを欲張るからこのザマだ
オレの小旅行を邪魔しやがって!
そっと近づく・・・逃げる様子はない
「早く!・・・ほら!・・・ほら!」
許せ・・・ボスの命令が出てしまった以上やらなければいけない
手を振りかざし狙いを定める
・・・が・・・黒い物体が何重にも重なって見え
なかなかタイミングを計れない
このところ仕事で使うケイタイがスマートフォンに変わり
小さな画面を凝視することが多くなったせいか
もともと悪い視力が一段と悪化した様だ
本を読むのにはそれほど支障はないが周りがすべてボヤけて見える
片や嫁さんは完全な老眼
老眼鏡なしではファミレスのメニューや財布の小銭も見えない
・・・二人共なかなかのポンコツ・・・
しかしそれはそれでいい
世の中便利になりすぎて知る必要のない事、見る必要のない物までが
まるでシャワーのように日々注がれているこの時代
これくらいのフィルターがあってちょうどいい
「ちょっと逃がさないでよ!」
「分かったから・・・あわてるな」
二人息を殺してゆっくりと近づき・・・動きが止まる
黒い毛玉が扇風機の風に吹かれて転がっているだけ・・・
「なんだ毛玉じゃない!」
「うん・・・毛玉だね」
「あ~やだやだ!」
「まっ・・・お互いポンコツってことだよ」
「まったく・・・お茶でも入れるわ」
「お願いします」
数分間ゆれる毛玉をじっと見つめるポンコツ二人・・・
悲しくもあり・・・微笑ましくもあり・・・
長谷部