伝承
2019.07.22
以前勤めていた会社の同僚が家を訪ねてきた
四年ぶり突然の訪問に少し驚いたが
話を聞くと色々な事情があり家族を残し
単身遠方の会社への勤務が決まったのだそうだ
大学生と高校生の娘が二人
もう少し稼がなければいけない・・・大変だ
「それもそうなんですけど・・・実は」
この後、彼の口から思いもよらない言葉が発せられる
「僕・・・おじいちゃんになっちゃいました」
「・・・へ?・・・」
ある時、娘と彼氏から突然の告白
人間驚きすぎると思考が停止してしまうようで
「ほんと・・・何も言えなかったです」
「そうだよね・・・でもおめでとう」
会社を離れこちらから連絡することは一度もなかったにもかかわらず
こうして挨拶に来てくれた彼の律儀さにただただ感謝の気持ちしかない
「よっ!・・・おじいちゃんガンバッテ!」
「やめてくださいよ」
そう言って車に乗り込む彼の背中には
孫が出来た喜びこれから思い切り甘えさせてやろうという
野心が感じとられた
私に出来ることは何もないが
彼と彼の家族の幸せをささやかながら祈るのみである。
子供の頃、両親が共働きだった為祖父母と過ごす時間が長かった
祖父は戦争体験者ということもありガタイがよく
体力もあり何処へでも歩いて出かける
歩き疲れ駄々をこねる私をおぶさり何処へでも歩いた
「人間歩かなければダメだ」そう言って歩く
転んで手足を擦りむき泣きわめいていると
「ハッハッハッそんなもの舐めれば治る」
そう言ってたいして気にもとめない
半信半疑の私にとどめの一言
「じいじの言うこと間違いなし!」
この言葉の前にちょっとした甘えやずるさなど通用せず
何度ひれ伏したことか。
酒好きでよく昼間から飲んでいた
つまみはお決まりのサバ味噌缶
横でおこぼれを貰いながら何気なく戦時中の事を聞いた事があった
当時の事をあまり語りたがらない人もいるそうだが
普段口数少ない祖父が丁寧に話してくれた事を覚えている
意気込んで立ち向かっていった仲間はみんな帰って来なかったこと
ジャングルでの戦闘中動けなくなった仲間に
「このまま置いていけ」
そう言われ置き去りにしてしまったこと
そうせざるを得なかった過酷な状況
それを今もなお悔やんでいた
自らも爆弾の破片で片目を失いながらも生還
四人の息子達を立派に育て上げる
そして孫が出来て(私)その孫達は
テレビで流れる戦争映画を見ながら
「かっこいい!」と何も考えずに叫んでいる
その姿を見ていろいろと思うところがあったであろう。
こんな偉大な祖父の足元にも及ばない私だが
もし孫が出来てふれあう機会があるのならば
思いきり甘えさせ、そして
「じいじの言うこと間違いなし!」
この言葉を後世に残るほど浴びせかけるとしよう。
長谷部
四年ぶり突然の訪問に少し驚いたが
話を聞くと色々な事情があり家族を残し
単身遠方の会社への勤務が決まったのだそうだ
大学生と高校生の娘が二人
もう少し稼がなければいけない・・・大変だ
「それもそうなんですけど・・・実は」
この後、彼の口から思いもよらない言葉が発せられる
「僕・・・おじいちゃんになっちゃいました」
「・・・へ?・・・」
ある時、娘と彼氏から突然の告白
人間驚きすぎると思考が停止してしまうようで
「ほんと・・・何も言えなかったです」
「そうだよね・・・でもおめでとう」
会社を離れこちらから連絡することは一度もなかったにもかかわらず
こうして挨拶に来てくれた彼の律儀さにただただ感謝の気持ちしかない
「よっ!・・・おじいちゃんガンバッテ!」
「やめてくださいよ」
そう言って車に乗り込む彼の背中には
孫が出来た喜びこれから思い切り甘えさせてやろうという
野心が感じとられた
私に出来ることは何もないが
彼と彼の家族の幸せをささやかながら祈るのみである。
子供の頃、両親が共働きだった為祖父母と過ごす時間が長かった
祖父は戦争体験者ということもありガタイがよく
体力もあり何処へでも歩いて出かける
歩き疲れ駄々をこねる私をおぶさり何処へでも歩いた
「人間歩かなければダメだ」そう言って歩く
転んで手足を擦りむき泣きわめいていると
「ハッハッハッそんなもの舐めれば治る」
そう言ってたいして気にもとめない
半信半疑の私にとどめの一言
「じいじの言うこと間違いなし!」
この言葉の前にちょっとした甘えやずるさなど通用せず
何度ひれ伏したことか。
酒好きでよく昼間から飲んでいた
つまみはお決まりのサバ味噌缶
横でおこぼれを貰いながら何気なく戦時中の事を聞いた事があった
当時の事をあまり語りたがらない人もいるそうだが
普段口数少ない祖父が丁寧に話してくれた事を覚えている
意気込んで立ち向かっていった仲間はみんな帰って来なかったこと
ジャングルでの戦闘中動けなくなった仲間に
「このまま置いていけ」
そう言われ置き去りにしてしまったこと
そうせざるを得なかった過酷な状況
それを今もなお悔やんでいた
自らも爆弾の破片で片目を失いながらも生還
四人の息子達を立派に育て上げる
そして孫が出来て(私)その孫達は
テレビで流れる戦争映画を見ながら
「かっこいい!」と何も考えずに叫んでいる
その姿を見ていろいろと思うところがあったであろう。
こんな偉大な祖父の足元にも及ばない私だが
もし孫が出来てふれあう機会があるのならば
思いきり甘えさせ、そして
「じいじの言うこと間違いなし!」
この言葉を後世に残るほど浴びせかけるとしよう。
長谷部