キックボクシングジム『テンクローバージム』は浜松市を中心に静岡県内4店舗と東京都世田谷区に1店舗を構えております。

テンクローバージムテンクローバージム

TRAINER’s
BLOG
指導員BLOG:指導員の日替わりブログ

指導員BLOG:指導員の日替わりブログ
ARCHIVES過去の
指導員ブログ

盲亀の浮木 発動篇

2020.06.01

暇つぶしに本を読んだりしていると
その内容はすぐに忘れてしまうのに
ある一節だけが脳裏に焼き付くことがある

・・・つまるところ・・・
神にもなれず悪魔にもなりきれなかった
中途半端な存在を人間という
それは同時に双方の要素を持ち合わせていることを意味する
それ故、自らを人格者などとうそぶく者は
無知で愚かだと言わざるを得ない・・・・

「え・・・お前入ったの?」
出社初日、面接を担当した一人が私の顔を見るなりそう言った
「酒は飲む?」と聞いてきた役員だ
採用にあたり役員の中で意見が割れたことを窺わせる
そうだろう・・なにより当の本人が驚いているのだから。
雑用をこなす見習い期間を経て正式に社員として任された仕事は
青果物を量販店などに販売している関連会社で人手が足りず
そちらを手伝って欲しいというのだ
配属された部署の上司に言われ固まる
本来の卸売業としての仕事ではない
要するに店回りの営業をしろということだ

「・・・営業・・・」

性格上もっとも向いていないと思われる職種
極度の人見知り、口下手おまけに一日中誰にも会わず
会話がなくても平気、むしろそれを望む様な純度の高い変態
当然、営業経験はおろか野菜果物の知識も皆無
そんな人間に営業・・・どうかしてるんじゃないか?
この上司も面接で話は聞いているはずだろう・・・
実は会社自体初めての試みで内容を今一把握しておらず
ほぼ見切り発車だった
「まあ・・とりあえずやってみろ」
もちろんだ元々断るという選択肢は用意されていないのだから。
「分からない事があれば何でも聞いてこい」
そう言われ困ったのは知らない事があまりにも多すぎるせいか
何が分からないのかすら分からないという面白い状況に陥っていた。

まず前任者から仕事の流れを教えてもらう
が、案の定、覚えの悪いオジさんの記憶に定着しない
とにかく目の前にある仕事を一つ一つ片付けていく
考えても無駄だ体で覚えるしかない。
しかしこの新たな試みに社員の目は冷ややかだった
関連会社とはいえ別会社の仕事をするのだ自社の利益にはならない
しかも担当がどこの馬の骨ともわからない入りたてのオジさん
「何なんだコイツは!」と、なるのは至極当然の流れ
市場相場は日々変動するため野菜の各担当者に話を聞きに行くが
皆怪訝な顔つき、人によっては挨拶はおろか目も合わせてもらえない
これは関連会社側の社員からも同じ
突然営業担当で来たのは知識も経験もない畑違いの人間
「無理だな・・・」
「あんな奴いつまで続くか分からないよ」
ご丁寧にわざわざ聞こえる様に話をしてくれる
「少々キツイな・・・」そう思うが腹は立たない
これがあたりまえの反応
周りが受け入れる受け入れないなど考える必要はない
コツコツと自らの責務を果たすのだ
私はここに友達を作りに来た訳ではないのだから。
それでも「お前になんて何も売ってやらねえよ!」
そう面と向かって言われればさすがに気が滅入る時もある
四面楚歌だと思われたこの状況の中、声をかけてくれる担当者もいた
「これ、珍しい野菜だから売ってみない?」
まるで救世主が現れ手を差し伸べてくれた様な感動を覚える

「・・おい・・」
振り返るとそこには「酒は・・」の上司
「いいか、俺達の仕事は物を売ることじゃない」
「恩を売るのが仕事だから・・・」
そう言って立ち去っていった
「・・・はあ・・・?」
おそらく深い意味があるのだろう
私がそれを理解するにはもう少し時間がかかりそうだ。

そして一番の懸念事項、店回り営業が始まる・・・
矜持篇につづく        長谷部
一覧に戻る ARCHIVES過去の
指導員ブログ

pagetop