危機回避能力・・自ら危険を予測し回避する能力

「おい！大変、大変！」
なにやら台所で嫁さんが騒がしい
「おい！ちょっとちょっと！」
う～む、なぜか反応したくない
正直いやな予感しかしないからだ

ふだん家では小学生に膝カックンを簡単にされそうなほど
抜け殻のような佇まいだが
今、こめかみからジットリと汗をかき
心拍数が上がり息苦しさを感じるほど
全身の細胞が危険を察知してピリついている。

テレビを見ながら、うっかり寝てしまったという体で
やり過ごしてしまおうかとも思ったが
クマと遭遇した際、死んだふりをしていると
かえって興味を持って近づいて来てしまう可能性がある
そんな話が脳裏をかすめる。
ただ、嫁さんとクマを重ねてしまうあたり
もはや正常な思考回路ではないことにも気付く（少し反省）

危機管理能力・・起こりうるトラブルを最小限に抑える能力

「どうしたの？」
台所で落ち着かない様子の嫁さんに話かける
「ちょっと聞いてよ！」
使おうとしていた調味料を計量するスプーンがいつもの場所にない、
くまなく探すがどうしても見つからず諦めかけて、ふと左手を見ると
しっかりとそのスプーンを握りしめていたという珍事。

「どう思う？」
「・・・・」

・・落ち着け、まずは落ち着け・・
ここは冷静な判断が必要とされる
言葉の選択を間違えると大事故に繋がりかねない案件だ

要するに老化現象なのだが、それを直接口にしてしまうのは
大型車に正面から体当たりするのと同じくらい無謀な行為（反省の色なし）

今まで何度この過ちを犯してきただろうか・・・

うまくお茶を濁す・・・
当たり障りのないファッとした感じの言葉で
今回はぜったいに回避してみせる！

「それは・・・なかなかだね・・」
「そうでしょ・・もう嫌になっちゃう！」
これはうまく濁せた！
ギリギリのところで大型車をかわしきった

「でもさぁ・・」
「・・ん？・・」

「毎日、同じ景色ばかり見てると人間っておかしくなるんだよ」
あれ？・・なにか雲行きが怪しいぞ・・
「私ずっとこの部屋にいるでしょ、ほら、旅行とかいかないし
というか少し遠出して遊びに行くこともないし
そういえば新婚旅行の時、あんた移動中のバスでずっと寝てたでしょ
あれってどうなの？覚えてる？」（覚えていません）
しばらく嫁さんの恨み節は続くのでした・・・

うまくかわしたと思いきや、
その先のガードレールに頭を強打し結果いつも通りの大怪我
危機回避能力、危機管理能力・・・
どちらも私には欠如しているようです。
長谷部