寓話の砦
2022.12.06
車好きの知り合いから聞いた話では
エンジンというものは普段から回転を上げておかないと
いざという時にスピードが出ないのだそうです
これは人間の脳にも同じことが言えるのかもしれません。
ただでさえ能力が低い上に、隙あらばボーっとしていたい
怠け者の脳みそを突然仕事でフル回転させようとしても無理な訳です。
目の前に積み重ねられた書類、迫る締切時間
作業を邪魔するかのように鳴り続ける電話
血圧は上がり目が血走る
がむしゃらにやり続けて終わった頃には真っ白な灰
何も食べていないのに食欲もありません
脳が考える事を拒否しているので素直に従います。
急激にエネルギーを使ったからか、しばらくすると
突然、甘い物が食べたくなるので、これも素直に従います。
なんだかソフトクリームの気分だな・・・
帰り道のコンビニへ寄ろうとするが満車の為断念
その先にあるパチンコ屋の敷地内に同じコンビニがあるのを思い出し
そちらへ向かう
途中、信号待ちでつい、うとうと・・・
いかん、急がねば!
糖分が足りないせいか頭がボーっとして
車から降りても足元がフラつく
いつも抱く若干の羞恥心など微塵もない
早く・・早くソフトクリームを・・
足早に店内へ入りレジの女の子に注文する
「ソフトクリームをください」
しかしキョトンとした顔をして動かない
あれ・・注文の仕方が悪かったかな・・
「ソフトクリームのバニラをひとつください」
女の子は無言のまま、おもむろにレジ下のボタンを押すと
店内にブザーが鳴り響いた
おい、おい、おい、
慌てて走ってきた店長らしき人と女の子がヒソヒソと話し始める。
「このお客様がソフトクリームを・・」
一体何が起こっているんだ・・・
状況が飲み込めずにいると店長らしき人が
「すいません、ソフトクリームはやってないんですよ」
これには驚いた、事情は分からないが
ここではソフトクリームの扱いを止めてしまったようだ。
続けて店長
「以前のコンビニではやっていたと思うのですが・・・」
・・・え?・・・
よく見れば別のコンビニに変わっているではないですか
いや、よく見なくても店員の制服にはハッキリと別のコンビニ名が表記されている。
「す、す、すいませんでした~」
身長が縮んだんじゃないかと思われるくらいに小さくなって足早に店を後にします。
その時、店員さんの呆れたというより、むしろ哀れんだ目を
生涯忘れることはないでしょう。
自身のポンコツぶりに改めて滅入るのと同時に
何が何でもソフトクリームを食べてやろうという謎の決意が生まれます。
別の店にわざわざ遠回りして、やっとありつけるソフトクリーム
ではなく、グレードを上げてプリンパフェにしてみました。
しかし、店を出る時、ガラスに映るプリンパフェ片手に
ご満悦なオジさんの絵面の悪さに、はたと我に返る
俺は一体何をしているんだ・・・
糖分で頭が冴えてきたのか、徐々に冷静さを取り戻していき
残ったのは猛烈な空虚感のみ・・・
車好きの知り合いはこうも言っていました。
車の能力を最大限に引き出す為には
日々のメンテナンスとドライバーの腕次第
だいぶくたびれて来た体を、おもんぱかり
食生活の見直しでもしてみようか?
そんなことを思いながらプリンパフェを平らげるのでした。
長谷部