残響
2024.10.08
連日のうだるような暑さ身も心も茹で上がってしまい
仕事がはかどるはずもありません。
大型の冷蔵庫から荷物を運び出している時は快適なのですが
そこから外へ出たとたん寒暖の差に体がついてこれず
寝不足も相まってめまいを起こし生命の危険を感じてしまいます。
そんなことを考えながら作業をしていると
荷物の上に何やらうごめく物が・・
「おっ・・なんだ?」
小心者のおじさんが恐る恐る目を凝らすと
どこで紛れ込んだのかトノサマバッタが鎮座している
デカイ・・・
その大きさと迫力から「殿様」と名が付いたのも頷ける。
中学のとき温厚で体の大きな友達が
なぜか「中学生ですでに完成された肉体」と噂され
ダビデ、と呼ばれていたのを思い出す・・・
さすがのトノサマバッタもこの猛暑にたえきれず涼みに来たのでしょう。
とはいえ、このまま荷物を出荷する訳にはいかない
近年、各売り先の品質面、異物混入に対する目は厳しくなる一方だ
いくら「殿様」といえど許してはもらえません。
慎重に捕獲して外へ連れ出します
「元気でね」
そう言って空へ放つと大空高く舞い上がった「殿様」
言葉を話せるのならば「かたじけない」とでも言うのだろうか?
そんなことを考えながら眺めていると
矢のように飛んできたカラスに一瞬でつかまり
目の前で「殿様」の命は潰えました。
救ったつもりがカラスにエサを献上したかたちになってしまい
「おぬし、はかったな!」という声が聞こえてきそうです。
ジリジリとした暑さの中なんともいえない後味の悪さも相まって
仕事がはかどるはずもありません・・・。
長谷部